次回静岡での朗読音楽会「月琴で綴る龍馬の手紙」公演の準備も兼ねて、
徳川慶喜に関する本を読了。

『その後の慶喜〜大正まで生きた将軍〜』(家近良樹・著、ちくま文庫)

その後の慶喜(家近良樹・著)

 

幕末から大政奉還までは、注目される人物ですが、
では明治になってからはどうしていたの?というと意外と知られていません。

ひとことで言うと、ひたすら趣味を極めた後半生だったのです。

その趣味が狩猟、鷹狩りに始まり、投網、鵜飼いなどの身体を動かす趣味から、
囲碁、将棋、謡い、能、小鼓、洋画、刺繍(!)といった文化的な趣味を網羅。

さらにはカメラに熱中、それも写される方でなく撮影する方で、
家族や村人などを撮影した写真を残しています。

このカメラ大好き、写真大好き、というところで、もう、すごい親近感。
メカニック好き、ハイカラ趣味は、新しく登場した自転車や電話を
すぐさま購入して試す、というところにも発揮されます。

「アイスクリーム製造器」で自家製アイス食べたり、
蓄音機でレコード鑑賞。

晩年には、自動車を息子と一緒に乗り回す、
ガス・ストーブを見るためにガス会社訪問、など、
新しい文明への興味は老年になっても衰えず。

元将軍なのに、ちょっと可愛い。
この本の表紙のイラストは、秀逸だと思う。

 

 

立場上、政治的な発言を一切自粛せざるを得ず、
趣味に生きるしかなかったとも言えるわけでもありますが、

では、時間の自由を与えられた人すべてがこのように趣味豊かに生きていけるか、というと
そんなことはない。
それは現代の定年退職した男性たちの様子を見てもお判りですね?

 

やはり慶喜がもともと性格として、
進取の気質や新しいものへの好奇心を持っていて、
それが遠く大政奉還の決断にも影響していたのでは・・とも思えてきます。

この本の「あとがき」に寄せられたエピソードがじんわりと心に沁みます。

歴史書でありながら、人物を描いた文学としても楽しめる秀逸な一冊。

 

今年4月に、イベントのために、
慶喜公が過ごした静岡の邸宅、浮月楼を訪問しましたが、
この庭の佇まいと合わせて、
とても魅力的な人物として私の中でクローズアップされています。

浮月楼・庭

老木を支えています。眺めていると樹ではなく、人の姿に見えてくる

 

浮月楼・石塔

この石塔の質感がたまらん