長崎新聞社(東京支社)に掲載していただいた紹介記事です。(2009年4月27日)
長崎ゆかりの古楽器とともに
温かく、ほっとするような音色。弦をはじいて音を出す西洋の古楽器リュートは12~18世紀の間、西洋楽器の中心だった。今では西洋でも奏者は数少なく、日本での奏者となれば10人程度。その1人だ。
東京を拠点に、全国で演奏活動を展開するなど精力的だが、もう一つ、リュートと似て非なる中国楽器の月琴(げっきん)も一年半前から奏でている。「リュートも月琴も、楽器にまつわる歴史的背景や、その時代に生きた人たちの暮らし、思いに関心がある。」
月琴は長崎と縁が深い。鎖国時代、中国文化の受け皿だった長崎には曲が口伝され、譜面も残る。国際基督教大(東京)在学時、長崎での月琴の伝承に関心を抱き、卒論のテーマにした経歴を持つ。
約二十年前は研究対象。今は演奏し、その魅力を広めることに力を注ぐ。不思議な縁だ。東京での長崎学講座などで、坂本龍馬の妻お龍が長崎にいたころ、月琴を奏でていたことを紹介しつつ、曲を披露した。
片やリュートは、天正遣欧少年使節が帰国時に西洋から持ち込んだ楽器の一つ。「4人の使節のうち誰かは、上手に奏でたに違いない」と想像を巡らす。「西洋と中国文化に最先端で接したのが長崎。リュートと月琴を通じて、私はその独特の歴史とつながりながら活動している。幸せです。」