【本】今日はヒョウ柄を着る日
2015年に発刊された『みんな彗星を見ていた』以降も、折に触れてリュートについて情報発信を続けている星野博美さんによるエッセイ集『今日はヒョウ柄を着る日』を読んだ。
岩波書店サイトでweb連載されていた段階から楽しみに拝読していたが、それを2017年7月に改訂・書籍化したもの。
長年猫と暮らし、最近愛猫を亡くした著者が「なぜヒョウ柄はあるのに、三毛猫柄はないのだろう?」と思ったところから出発した連載だという。
着眼点のユニークさ、
「なぜ」を興味と好奇心の赴くままに観察し探求していく粘り強さ、
そして、すっきりとした文体とで、身近な出来事から社会や世相を描き出していく。
エッセイの一つ「偏食と偏聴」にリュートを習っている話が出てくる。
星野さんは、一時期、練習が苦痛になったという。
それをどう乗り越え、再び「リュート愛」を取り戻したか、という話が続くのだが、
それから話はアレヨアレヨと言う間に、
私たち世代が(星野さんと私は同世代)無意識に刷り込まれているある種の音楽と
その歴史的背景の考察へと急展開していく。
このダイナミックな話の展開が実に鮮やかで、読んでいて快感だった。
「日常的に楽器に触れるようになって痛感するのは、音楽にまつわる感覚を支配するのは快楽であるという、当たり前のようでいて忘れがちなことだ。」という一文が心に沁みる。
エッセイ集なので、これから年末年始、慌ただしい中でも気軽に読める。
どのエッセイにもクスッと笑わせてくれるユーモアがあるのが嬉しい。
猫好きの方、老親との関係や自身の老後のことに悩んでいる方、
キリスト教やリュートに関心のある方にお勧めの一冊。
『今日はヒョウ柄を着る日』星野博美 株式会社岩波書店 2017
ヒョウ柄世代に近づきつつあることを認めながらも、まだピンク色であるところに、著者の心情がうかがえ、書籍の装丁の妙味があるように感じた。
表紙にビウエラ画像が使われ、星野さんがリュートを始めるまでの経緯も記されている話題作『みんな彗星を見ていた』についてもブログ記事を書いています。
上記2冊を読む前に、こちらを読むともっと楽しめる!