【本】スウェーデンの王様
2017年の最後に、素敵な本と出会い、とても爽やかな気持ちで大晦日を過ごした。
スウェーデンの王様(那須田 淳/講談社/1992年)
体裁は一見、小学校や中学校の図書館にあるのがふさわしい児童書のようでもあるが、切り口がいろいろあり、様々な要素がバランスよく配された作品だった。
内容は「失踪してしまった叔父が残した古楽器クラヴィコードのキットを少年が組み立てる」という話なのだが、その中に自然との交流や、古楽器というものの魅力、音楽家になるということ、進路のこと、親子の関係、・・などが織り込まれている。
読み終わった時には、この不器用な私でさえも「ちょっとクラヴィコード、組み立ててみたい・・いや、その前にリュートのキットを・・」という危ない誘惑が頭をよぎった。
少なくとも、これまで古楽器に無縁だった人には「クラヴィーコードという楽器の音色を一度聴いてみたい」「古楽ってどんな音楽?」と思わせてしまうだろう。
さりげなくを装っているようでもあるけれど、実は古楽/古楽器の魅力を大いに語っているという、そのさじ加減が実にうまい作品だった。
最後に、製作中のクラヴィコードと作者の写真が掲載されている。
なお作者の兄は音楽学の那須田務氏、義姉はハンマーフリューゲル奏者の伊藤深雪さんとのこと。
プロフィール文中の「・・・最近は特に、古楽器の素朴な音色にひかれている。雨あがりの公園できくと、幸せな気分になるよ。」という言葉がとても素敵。
私も、幸せな気分になれる音楽を聴いたり奏でたりしていきたいと純粋に思う。