『マクベス』を知ると『7人のシェイクスピア』がもっと楽しい!

週刊『ヤングマガジン』で連載中の『7人のシェイクスピア』(ハロルド作石)、無事に単行本第5巻も出て、連載好調の様子。この巻で「7人」の構成が明らかにされ、シェイクスピアたちの作品もようやくロンドン市民に受け入れられて大ヒット、と新たな展開を見せていきます。リュートの演奏シーンも第39話に登場しています。

 

7人のシェイクスピア第5巻写真

 

第5巻の終盤から次なる作品『マクベス』の話となり、印象的な台詞と共にストーリーは盛り上がっていくのですが、どうも私の気持ちがついていけてない。

シェイクたちと一緒に、私も喜んだり落胆したりしたいのに、何故なんだろう・・・と思ったところ、要は『マクベス』の話をよく知らない、からなんですよね。

わからなくて楽しめないのは悔しいので、学ぼう。

ということで、まずは映画見ました。

 

荒涼とした自然を捉えたカメラワークが非常に美しい作品です。主張しすぎない音楽と抑制のきいた演技。その結果として、洗練された言葉と内面の心理描写がくっきりと浮かび上がる映画となっています。この映画についてのレビューはこちらのブログが詳しいのでご参照下さい。

 

『マクベス』は実在した11世紀スコットランド王の話。シェイクスピアが生きていた時代から500年ほど前の史実に基づいた作品です。

その古さ加減を例えるならば、21世紀の我々が(同様に500年前の)16世紀の戦国時代ものを大河ドラマで見る感覚に近いでしょうか。例えば大河ドラマの『真田丸』とか。

シェイクスピアの頃の人々(観客)にとって、『マクベス』はそれほど遠い過去の、しかも他国の歴史を描いた作品ということになります。

 

先に上げたレビューブログでは、詳細にこの映画とシェイクスピア原作との差異を説明していますが、私の関心は、むしろシェイクスピアがこの過去の歴史に対してどうアプローチしているかのほうが気になるところ。

これについては、『7人のシェイクスピア』中ではすでに『リチャード三世』についてのカインの言葉、今回の『マクベス』の創作にあたってのシェイクの言葉によって強調されています。

これは取りも直さず、シェイクスピア作品に対する『7人のシェイクスピア』という作品の位置づけ(ハロルド作石氏の意図)をも示していると言えるでしょう。

一言でいうなら「芸術的価値は、史実の再現を条件としない」ということに尽きます。この辺りの歴史に対する姿勢は、古楽のアプローチを考える上でも大いに参考になります。

 

『きれいは汚い。汚いはきれい。』と、矛盾した言葉を同時に言う、いかにもシェイクスピアらしい台詞に代表される『マクベス』。

次の第6巻で、いよいよその内容と波乱に満ちた上演の様子が描かれます。

ネタバレにならないよう書くのが難しくて、持って回ったような書き方になりましたが、気になる方は『7人のシェイクスピア』を読んでみて!

 

第6巻は2018年9月6日発売予定、ただいま予約受付中です。