リュート奏者必見!「クアトロ・ラガッツィ 桃山の夢とまぼろし」展

11月末に長崎・大村での公演を終えて、一旦、東京に戻る。
その翌週、再び長崎市へ。

折しも、長崎県美術館で「クアトロ・ラガッツィ 桃山の夢とまぼろし」展が開幕したばかり。静岡での展示を見逃していたので、出かけてみた。

サブタイトルは「杉本博司と天正少年使節が見たヨーロッパ」、
そしてもちろん「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産 世界文化遺産登録記念」と銘打ってある。

杉本博司氏と天正少年使節

この企画展は、国際的に活躍する現代美術家の杉本博司氏が、イタリアのヴィチェンツァにあるオリンピコ劇場で、天正少年使節が描かれた16世紀末の壁画と出会ったことに始まる。

以来、杉本氏は少年使節の足取りを辿り、彼らが見た風景や建築物を写真に収めた。この企画展は、杉本氏が撮影した写真作品と、少年使節に関する歴史的資料によって構成されている。

先に静岡のMOA美術館で開催された同展覧会の記事が詳しく、写真作品も見ることが出来るので、まずはリンク先をどうぞ。

美術手帖:杉本博司と天正遣欧使節の数奇なつながり。

モダンアートな長崎県美術館

長崎県美術館
長崎県美術館(サイトトップページ画像)

MOA美術館に劣らず、長崎県美術館もガラス張りで天井が高く、広々としている。その展示スペースを贅沢に使い、大きなモノクロームの写真作品が並んでいる。広い部屋の長椅子に座って、かなり離れた距離から写真作品を眺める。

このゼラチン・シルバー・プリントという手法がどのようなものか知らないが、黒の質感が素晴らしい。天正少年使節と関係なくとも、純粋に写真作品として感動的だった。

少年たちが眺めた、果てしなく続く海

中でも、長崎の、あるいはヨーロッパの、海を撮影した作品群が胸に迫る。
水平線が、四角い画面を海と空とに二分する。
ぼやっと霞んでいる海、太陽の光を反射した海。
天正少年使節たちは、往復8年間のほとんどを、このように大海原が続く風景を眺めていたのだ。

イタリアのピサで天正少年使節のために舞踏会を主催したトスカーナ大公妃ビアンカ・カッペッロの肖像画(東京富士美術館所蔵)や、長崎のサント・ドミンゴ教会跡からの発掘物、そして南蛮屏風など見どころいっぱいだ。

ビウエラを弾く女性像「婦人弾琴図」

キリシタン関係の資料を見るうち唐突に「婦人弾琴図」(大和文華館所蔵)が現れて驚いた!全然知らなかったよ!!

桃山時代の信方(伝)による作品。日本でビウエラが描かれた作品例として有名だが、実物を見るのは初めて。
色合いや、衣の裾のあたりに脚の形が透けて見えるところなど、とても繊細で美しい。印刷された葉書やweb画像とは大違い。

この企画展の前期ではこの「婦人弾琴図」が、そして12月27日〜2019年1月27日の後期では、入れ替わりに長崎歴史文化博物館所蔵の「弾琴図」が展示される。

リュートを弾く人物・南蛮画「弾琴図」

後期から展示予定の「弾琴図」はリュートを持つ人物が描かれた南蛮画である。2008年に「南蛮の夢、紅毛のまぼろし」展で東京・府中市美術館にやって来た。

当然、出かけたが、会えなかった。
もう30年近く、待っている。
その時の顛末と作品については、次のブログ記事をどうぞ。

永田斉子のリュートと過ごす日々:南蛮と紅毛

どちらの展示会にも「夢とまぼろし」のキャッチコピーが使われている。安土・桃山時代の日本にとって、西洋は「夢とまぼろし」だったのか・・・。

前期に展示されている上記の「婦人弾琴図」については、作品脇に添付された解説をメモしてきたので、次の投稿で書いておく。

▼書きました。

『婦女弾琴図』(信方・筆)<リュート絵画>