天正遣欧少年使節と大村、そしてリュート

2018年11月25日(日)長崎県大村市での大村歴史シンポジウム&スペシャルコンサート「天正遣欧少年使節と大村〜世界は長崎で繋がっていたー大村純忠の夢・世界を見た少年たち〜」は、満席のお客様を迎えて無事に終了いたしました。

ご来場のお客様、出演の諸先生方、主催の大村純忠revivaLぷろじぇくとの皆様、後援の皆様、どうもありがとうございました。

この催事は、スペイン修好150年を記念し、
平成30年度大村市市民いきいき助成金交付金による事業として開催されました。

チケットは早々に完売し、地元の方々の関心の高さがうかがえます。

この公演についての詳細情報

前日に長崎入り。

長崎空港は開催地である大村にあるのですが、今回は長崎市内に用事があったため、まずはリムジンバスで長崎市へ。

用事を済ませ、長崎駅からJRの電車で大村駅へ。

ホームに降りると、(顔がないけど)天正遣欧少年使節団たちが迎えてくれました。

天正少年遣欧使節パネル@大村駅

シンポジウム第一部【講演】

シンポジウムの第一部では、
3名の講師の方々がそれぞれに講演。

長崎・大村在住の稲富裕和氏は、
30年前に、キリシタン史の松田毅一氏と結城了悟神父とが白熱した議論を戦わせたという、今や伝説のシンポジウムのことを印象深く語られました。

今後、松田毅一氏の著作を読むたびにこのことを思い出しそうです。

次に、作家・清涼院流水氏が登壇。
今年『純忠 日本で最初のキリシタン大名となった男』『ルイス・フロイス戦国記 ジャパゥン』を出版した経緯や大村純忠に興味を持つことになったきっかけ、その人物の魅力について熱く語られました。

十年の歳月を経て完成した『純忠 日本で最初のキリシタン大名となった男』。その間ずっと大村純忠のことを考え、思い続け、対話してこられたのでしょう。

清涼院氏のお話を聴いているうちに、大村純忠が再び肉体を得て、現代に生きているかのような気さえしてきました。

禁教令の影響で、大村純忠の墓や記念碑は残されていません。
清涼院氏より「大村純忠の銅像を建てよう!」という
提案がなされました。

次に、上智大学特任教授で
イエズス会やキリシタン史がご専門の
高祖敏明氏による講演。

専門的な内容をやさしい語り口で、わかりやすくご説明下さいました。

天正遣欧使節については「少年」がつくことが多いが、当時は15歳で元服、帰国した時は立派な青年になっていたので、少年をつけない呼称を提案なさいました。

この天正遣欧使節よりも前に、宣教師が日本人をヨーロッパに連れて行った2例があるが、それとこの天正遣欧使節とは何が違っていたのか、
ヨーロッパ側での対応はどうだったのか、どのような記録が残っているのか、などについてご説明下さいました。

それぞれの講演が終わったところで、
気分転換も兼ねて、リュートによるコンサートです!

【スペシャルコンサート】
天使が奏でた楽器・
リュートによるルネサンス音楽


天正少年遣欧使節と大村ーリュート演奏永田斉子2
天正少年遣欧使節と大村ーリュート演奏永田斉子1

今回はプログラム曲目は非公開としますが、
スペインでのフェリペ2世との謁見、
トスカーナ大公妃主催の舞踏会、
秀吉の御前演奏、の3場面で演奏されたと
考えられる曲目を13曲、約20分間演奏しました。

当時の雰囲気を感じてもらいたくて、
背景のスクリーンには、
リュートを奏でる天使像や、
舞踏会、器楽合奏を描いた作品などを
曲ごとに投影しました。

Negriの舞踏譜

音響&照明、PC操作、司会進行、
それぞれの担当者さんとの息もぴったり。
チームワークよく動けたことを嬉しく思います。

私の細かい注文に根気強く応じて下さって、
ありがたい限りでした。

いつもは簡単なトークを挟むところですが、
今回は講演会の幕間につき、
あえて演奏のみとしました。

その代わり、リュートの説明と曲目解説を
掲載したプログラムを別途配布しました。

天正遣欧少年使節と大村リュートコンサート・プログラム表紙

思う存分リュートをアピール。
A4サイズ4ページ、カラー版の
豪華プログラムとなりました!
こんな綺麗なプログラム、
今まで作ったことがありません。

天正少年遣欧使節と大村ーパネルディスカッション

第二部【パネルディスカッション】

第二部は、3名の講師によるパネルディスカッション。

それぞれ少しづつ立場が違うこともあって、
多様な角度から大村純忠と
天正遣欧使節像が語られました。

大村純忠の「出家」が具体的にどういうことを指していたのか・・・
など興味が尽きません。
時間も忘れて聞き入りました。

天正少年遣欧使節と大村ー出演者&主催者記念撮影

無事終了して安堵のうちに記念撮影。

後列左から、
主催の大村純忠revivaLぷろじぇくとメンバー山石みほこさん、
稲富裕和先生、
大村純忠revivaLぷろじぇくと代表の前田裕子さん。

前列左から、
高祖敏明先生、私、清涼院流水先生。


2006年ごろより「長崎のキリスト教関連遺産を世界文化遺産に!」という主旨のイベントにて、度々このテーマで演奏してまいりました。

10年以上かかって、今年ようやく「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されました。

こうして再び天正遣欧少年使節のイベントに出演する機会を頂いたことを感慨深く思っています。

これまでの「天正遣欧少年使節」に関するイベント出演についての記事

大村純忠に関する遺跡は禁教期に破壊されたため、今のところ世界遺産の構成資産に含まれていませんが、キリシタンの始点が大村純忠であることは間違いありません。

今後、大村純忠revivaLぷろじぇくとの皆様のより一層のご活躍を期待しています。

リュート奏者にとっての天正遣欧使節

天正遣欧使節たちが演奏した具体的な曲名は
記録されていません。

しかし、渡欧する前にセミナリオで音楽を学び、
歌やビウエラやオルガンなどの演奏が
出来るほどの実力があったこと、
ヨーロッパからリュートその他の楽器を持ち帰ったことは
記録されている事実です。

現代に生きる私としては、
彼らがまさにリアルタイムで、スペインやイタリアの
ルネサンス音楽を体験したことが羨ましくてなりません。

大村湾の夕暮れ

大村湾の夕暮れ。

清涼院流水氏の著作はこちら。おすすめです。

フロイスの『日本史』を完訳している松田毅一氏の著作。