【F. ダ・ミラノRicercar #34】校訂譜は時々「校訂しすぎじゃない?」と思うことがある
今村泰典氏の公開レッスンをフランチェスコ・ダ・ミラノのNo.34(Arthur Nessによる作品番号)のRicercar 、通称“La Compagna”と呼ばれる曲で受講することにした。
No.33のRicercarは留学時代にレッスンも受け、期末試験でも演奏した記憶があるが、それに続くNo.34はハイポジションにわたる速弾きのスケールが炸裂する難曲。これまで手が出なかったが、これを機会に取り組むことにした。
まずはNess氏が五線譜を添えて校訂している全集を見ながら譜読みしていく。
手稿譜、印刷譜に限らず、オリジナルのタブラチュアには、単純な文字やリズムの書き間違いや欠落、段がずれていたり、拍が足りない・・・などのミスがある。
校訂譜では、注釈を添えつつ正しいと思われる表記に手直ししてあるわけだが、時々「校訂しすぎではないか」と思う場合がある。
どの程度オリジナルを訂正をすべきか、その加減はなかなか難しく、結局は演奏者一人ひとりの判断に委ねられることになる。
No.34のNess版五線譜の45~46小節
トップヴォイスの動きが悩ましい。Nessの解決策もありがちなパターンだし、不自然ではないが、うーん。
上記赤い↑の部分、校訂譜のように前にずらすべきだろうか?
(さらにその前の3の扱いもどうしたものか。)
ここで、オリジナルのシエナ写本を確かめてみよう。
これは一段飛ばして書き写したことに後で気がついて、余白に無理やりねじ込んだ、【手書きあるある】なパターンですな。
こういう時はなるべく読めるままに自然に読んだ方がいいと思う。
46小節目の後半拍(シラ)の位置は、校訂譜よりもタブラチュアの方を採用することにした。(文字がくっついて潰れているけど、私には問題なくそう読める)
単純に下降形のパッセージの繰り返しでいいと判断。
次に、82小節、83小節の各後半の拍のリズム。
校訂譜では半分の長さに訂正し、リズムパターンを変え、縦線の区切りも変更している。
ではオリジナルではどうなっているか。
上段の最後の小節から下段の最初の小節の部分。
何の問題もなく、きれいな表記。これはこのまま素直に読めばいいんじゃない?
ここもタブラチュアのリズム表記を活かすこことにした。
校訂譜とオリジナルを見比べて自分の校訂譜を作るのが良いかも
タブラチュアの方を活かした点は上記2ヶ所ぐらい。
この作品は、手稿譜ということもあって、ちょこちょこと間違いがあり、校訂譜を参考にしながら、タブラチュアを訂正していく必要があるが、上記2点以外の部分はほとんど迷うことはない。校訂譜通りにタブラチュアを書き換えていけば大丈夫。
どうしてもCDで聴き覚えたものに囚われがちだが、はっきりとした正解がない不明点に関しては、オリジナルを見て自分で判断し(勇気がいるけど)自分の校訂譜を作りながら練習して、またわかったことがあったら修正を重ねていくのも大切なことかと思っている。
さて公開レッスン、どうなることやら。わかったことがあったらまた追記する。