快進撃中!歴史料理本『歴メシ!』著者の趣味は古楽器演奏
今、話題沸騰中の再現料理レシピエッセイ、『歴メシ!世界の歴史料理をおいしく食べる』をご存知ですか?
2017年8月10日に第1刷発行から1ヶ月半の間にすでに第4刷、1万部を超えるセールスを記録、各方面から大注目されております。
その著者・遠藤雅司氏のプロフィール欄を見ると
・・・趣味はクラシックギター、バロックギター、リュート、チェンバロの演奏、国際基督教大学での卒業論文は『J.ダウランドの音楽と生涯』・・・とあるではありませんか!
今日は、この本についてのご紹介です。
『歴メシ!』とはこんな本
書籍情報
歴メシ!世界の歴史料理をおいしく食べる
著者・遠藤雅司(音食紀行)
柏書房
定価(本体1,700円+税)
帯には「最古のパン、中世のシチュー、ルネサンスの健康食、ヴェルサイユ宮殿の晩餐会etc・・・
5000年の時を料理で旅する、再現料理レシピエッセイ」とあります。
古くは、紀元前3000〜紀元前400年ごろの古代メソポタミア料理から、19世紀後半のプロイセン王国&ドイツ帝国まで、約5000年の長い年月を時代順に、いろんな国の料理レシピが並んでいます。
この本が単なるレシピ本と一線を画すのは、
各時代の著名人を具体的に挙げて、その人物にまつわるエピソード、その時代の文化的・社会的背景や食材についての情報を面白く盛り込みながら、料理を紹介しているところ。
この工夫で、ぐっと料理への親近感が湧いてきます。
古楽関係者が興味をそそられるのは、
第4章 リチャード3世の愉しみ(15世紀 中世イングランド)
第5章 レオナルド・ダ・ヴィンチの厨房(16世紀 ルネサンス期イタリア)
第6章 マリー・アントワネットの日常(18世紀 フランス・ブルボン朝)あたりでしょうか。
古楽の時代を生きていた人々がどんな料理を食べていたのか、
具体的に知りたくなってきたでしょ?
「その料理を私も実際に食べてみたい〜!」と思ってきたでしょ?
「音食紀行」のイベントで実食しよう
この本、そもそもは遠藤氏が4年ほど前から行ってきた歴史料理とその時代の音楽を楽しむイベント「音食紀行」から始まっています。
私はTwitterで、休日に自宅で中世やルネサンス料理を作っては友人に振る舞っている遠藤氏の活動を、
面白く拝見しておりました。
最初は、中世〜ルネサンスあたりだったのですが、参加者の意見と要求がどんどん高まり、またそれに遠藤氏がすごい勢いで応えていて、雪だるま式に料理のレパートリーと、イベント参加者の層が拡大していきました。
その辺の経緯はTwitterにまとめられています。
「音食紀行」イベントは各地で随時開催中です。
体験してみたい方は音食紀行公式サイトをチェックしてみてください。
歴史料理を作ってみたい!
歴史再現料理を「自分でも作ってみたい!」と思った方のために、この本は出版されています。
そんな人々への遠藤氏の思いを、本の帯(裏面)のキャッチコピーが実にうまく表現しています。
「古くてもおいしい!現代人向けアレンジ」
「身近&安価な食材でかんたんクッキング」
「読んでなるほど食文化エッセイ」
読んだだけでは終わらない、読んでいるうちに自分でも作ってみたくなる。
けれど、それがいくら再現料理として正しくても、
味がまずかったり、材料の入手が困難だったらもう2度と作らないでしょう。
歴史料理を楽しむための工夫と知恵、
遠藤氏の揺るぎないコンセプトがしっかりと明記されています。
実際、この本が出版されるやいなや、Twitter上では早速「作ってみた!」という声が写真入りで続々と投稿されて続けています。
読んでほしい「あとがき」
実は、この本の中で古楽関係者の皆さんにも読んでもらいたいな、と思ったのは、
一番最後「おわりに」と題された部分です。
遠藤氏がなぜこのような歴史料理の再現をすることになったのか、
それが古楽とどう関係があるのか、について書かれています。
その内容についてはネタバレになるのでここでは書きませんが、
是非、書店で手に取ってみるなり、購入するなりしてご覧いただければ、と思います。
この本がレシピ本としても歴史書としても異例なほどの売れ行きを記録していること、
一般人のどんなニーズに応えているのか、などを考え合わせると、
多くのヒントを見いだすことができるかもしれません。
私も作ってみたよ
私も作ってみました。
リチャード3世が食べていた「レンズ豆とラム肉のスープ仕立て」(P.70)
カブの代わりに、大根の角切りで代用。
バターで炒めてコンソメ・スープ入れて、レシピ通りだとじっくり煮込むわけですが、
もう私は圧力鍋を使って10分ぐらいで完成。
レンズ豆も乾物で保存がききますし、食感のアクセントになって良いですね。
(写真では下の方に沈んで見えないけど)
シナモンを入れる、というのが不思議な感じでしたが、
恐る恐るやってみると・・シナモンとても合う!
滋養に富み、身体にエネルギーが湧いてくるような感じで、
家族にも大好評!
ラム肉が苦手な方は牛肉で代用すると良いかも。
この本の165ページのSpecial Thanksのところをご覧いただくとわかる通り、
永田斉子(リュート奏者)と記載していただいております。
と言っても、リチャード3世のことなんて全く私の専門外なのですが
「多くの目を通した方が良いよねー」ということで微力ながら校正作業にご協力させていただきました。
老眼を気にしなければならない中高年世代の代表として、
また照明がやや暗めの台所で働く者として
「色のついた文字が読み難くないか、文字の大きさはどうか」
などに気をつけて校正させていただきました。
大学の助教授、教授陣など錚々たるメンバーの一員に加えて下さった上に、ご本もご恵贈賜り、遠藤さん、柏書房様、どうもありがとうございました。さらなる増版とご活躍をお祈りしております。