【本】金澤正剛氏・待望の新刊!『ヨーロッパ音楽の歴史』

金澤正剛『ヨーロッパ音楽の歴史』

音楽学者・金澤正剛先生による『ヨーロッパ音楽の歴史』(音楽之友社)が刊行されました。

金澤先生は、中世〜ルネサンス〜バロック時代の音楽について、いわゆる古楽に関するご著書が多いのですが、今回は古代ギリシャから1980年代まで(!)のヨーロッパ音楽の通史となっています。

帯にある通り(って、写真では肝心のそこが切れちゃってますが)
“ロングセラー『キリスト教と音楽』『古楽のすすめ』の著者、
待望の新刊”です。

 

金澤先生による古典派以降

大学時代、金澤先生による「西洋音楽史」の授業では、3ヶ月のうちの2ヶ月半が「中世〜バロック音楽」、残りの1週間ぐらいで「古典派とロマン派音楽を比較対照しながらまとめる」という比重だったような記憶があります。

今回のご著書では、さすがに分量の3分の2がバロック以前ということはなく、古典派以降の音楽にも十分な紙幅がさかれています。
古楽関係者には、“金澤先生による「古典派以降」” が、一つの大きな読みどころでしょう。

音楽とは人間にとって何なのだろうか?という究極の問い

「音楽とは人間にとって何なのだろうか?衣食住と異なり、たとえ音楽がなくとも人間は生きていられる。それにもかかわらず、人間のいるところ、必ずと言って良いほど音楽が存在する。・・・」と、誰もが一度は抱く、直球の疑問から「まえがき」が始まります。

2020年、新型コロナウィルスによってコンサート自粛が続き「芸術活動は不要不急のことなのか?」という問いかけを余儀なくされている今、この「音楽は人間にとって何なのだろうか?」という究極の問いは、切実な現実的なこととして私たちに迫ってきます。

通史を俯瞰して得られるヨーロッパ音楽への視点

「さいごに」の章では、音楽の四大要素として旋律、ハーモニー、リズム、音色があり、どれらのどれに比重を置くかは時代によって異なるわけですが、その歴史の背景には「ある問題」が関係している、と金澤先生は述べています。

さらに「これまで音楽は〇〇な様式と△△な様式とを交互に繰り返してきた」という話から、次なる時代は・・・と締めくくられています。

上記2点は、時代ごと、事柄ごとだけにフォーカスした近視眼的な論からは決して生じない、2000年以上という長い歴史を俯瞰してこその歴史観でしょう。

次なる時代の音楽は

新型コロナウィルスによって、今、音楽活動は先の見えない状況が続いています。
だからこそ「次なる時代が求める音楽はどういうものか」を探り、「同じような状況の時、歴史はどう動いてきたのか」を学びたいところ。
そういう意味においても、この本は、古楽関係者だけでなく、他のジャンルの音楽家にとっても大きなヒントを与えてくれるかもしれません。

専門書でありながらも、語りかけるような文体でわかりやすく書かれています。

演奏家だけでなく、音楽リスナーが歴史的・文化的背景への理解を深めたり、音楽を聴く楽しみを広げるためにも最適の一冊となっています。

帯のキャッチコピーを以下に紹介しておきます。

《研究者から一般の音楽ファンまで》

各時代の音楽の魅力を再発見でき音楽も聴いてみたくなる
国際的活動豊かな日本人研究者による
新たな視点の音楽史!

 従来の音楽通史は概論・定説による教科書的なものが多かったが、本書は著者の長年の研究から導き出される豊富な知識、独自の視点・推論を軸として一歩も二歩も踏み出した内容で、未来への橋渡しになる。

 著者の専門のキリスト教音楽については、ヨーロッパ音楽の基礎として音楽史の流れの中で、とくに充実してわかりやすく書かれている。

 古代、中世、ルネサンス、バロック、古典派、ロマン派、ロマン派以後の歴史区分については、独自の考え方による区切り目を示し、時代の転換期の記述が興味深く展開する。

『ヨーロッパ音楽の歴史』金澤正剛 音楽之友社

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