天皇が奏でる楽器=帝器の歴史『天皇の音楽史』
月琴を考える上で、少し時代の幅を広くとって俯瞰してみようかと思い、
読んだ本、『天皇の音楽史〜古代・中世の帝王学〜』。
歴史文化ライブラリー442
『天皇の音楽史 古代・中世の帝王学』
豊永聡美・著
吉川弘文館 (2017年)
毎年1月に皇居で催される歌会始が広く知られているのに対し、
管弦の楽会である御楽始(おんがくはじめ)は、明治2年(1869年)の開催が最後になっている、という。
そのため、近世までの天皇が帝王学の一つとして琴、笛、琵琶などの管弦楽器を演奏してきたことは
あまり知られていない。
この本では、歴代天皇の音楽との関わり、帝器の変遷について時代的な考証を行っている。
自分用のメモとして、簡単に大きな流れをまとめると
・古墳時代の神事として琴を弾く「演奏する天皇(大王)」から、やがて自身は演奏しない奏上されるだけの「聴く天皇」の時代に。
・平安時代は、大陸から優れた楽器と演奏技術がやってきて、宮廷音楽が高度化、天皇が本格的な演奏を始める。「演奏する天皇」の時代へ。
・その後、政治的な事情も加わり、帝器は 琴→笛→琵琶→笙→笙と箏 へと変遷。
・明治時代以降は天皇自ら演奏することはなく、再び「聴く天皇」の時代へと。
知らないことだらけでした。
良くも悪くも、急速に西洋文化へと傾倒していった明治時代の特徴が
ここにも表れていることを確認しました。
皇室の方々がハープやヴィオラなどを演奏なさるのは単なる趣味ではなかったのだ!という発見も。
著者は、近代の天皇が、それまでと同様に日本の楽器を習得し、
自ら演奏するという伝統が続いていれば、御楽始も存続し、
ひいては日本の伝統音楽への国民の関心ももう少し高いものになったかもしれない、と結んでいる。
お!? この本、面白そう!