法界節に関する新聞記事(明治32年・報知新聞)

月琴歌(九連環)から派生した法界節に関する新聞記事を偶然見つけたのでメモとして記載。

明治32年5月17日付・『報知新聞』の3面記事

法界節に関する新聞記事

明治32年の報知新聞

以下、かな遣いなどを読みやすくして現代語訳

◉犬から人の喰合い(洲崎で)

昨晩1時ごろ、洲崎弁天町1丁目鈴八幡楼前にて、本所菊川町1丁目40番地、船乗業の森嘉一郎(26)、弟・新之助(22)他2名が、冷やかしながらホーカイ節に耳を傾けていたところへ、南葛飾郡葛西村、船乗業の恩田卯之助(21)他3名が通りかかり、同じくホーカイ節に余念ないところ、新之助の連れていた飼い犬が卯之助の足に触ったと、他の3名も一緒になって喧嘩を始め、嘉一郎は隠し持っていた大型のナイフで卯之助に切りつけ、左額部に深さ1寸6分、その他数ヶ所の重傷を負わせ、一時は廓内、上を下への騒ぎとなったが、警官が出張して双方ともに引き離してようやく鎮まったものの、関係者の半分以上は逃げ去った。

 

洲崎弁天町は、現在の東京都江東区東陽町の旧名。明治21年に根津から遊郭が移転し、吉原と並ぶ遊郭地であった。

明治32年ごろホーカイ節が東京の遊郭地の街角で奏されていて、通りかかった20代の若者を「余念ない」ほど魅了していたことがよくわかる記事である。

だが、この事件を報じるのに、ホーカイ節の記述は必要だったのか、やや疑問。

そもそも喧嘩の原因は犬、あるいは、その犬も噛み付いたわけでもないので、犬を口実として日頃のストレスをぶつけただけの喧嘩であろうと思われる。

今も昔も三面記事。このようなちょっとした事件から、ぎょっとするような猟奇的な事件まで。

見つけたのは、この記事の上に坂本龍馬の妻・お龍についての連載記事『坂本龍馬の未亡人』が掲載されており、それを調べていたため。