リュートCD「 Song Collectors 歌の蒐集家たち」ライナー・ノーツを公開

2019年6月16日にリリースしたリュート・ソロCD「Song Collectors 歌の蒐集家たち」のライナー・ノーツを公開します。CDに収録されている作品タイトル、CDの購入方法などは記事の最後をご参照下さい。

収録曲についての詳細な解説はこのライナー・ノーツには含まれておりません。このブログおよびサイトにて順次公開していきますので、どうぞお楽しみに。

Song Collectors 歌の蒐集家たち 

イングランド、スコットランド、アイルランドのいわゆる“民謡 Folk Song”として親しまれている歌を200年ばかり遡ってみると、歌詞やメロディーが微妙に異なっていて印象がだいぶ違うことに驚く。

このような歌は、もともと一般民衆の生活の中で口頭伝承によって歌い継がれてきたものであった。今、私たちが時を遡ってその姿を知ることができるのは、どこかの時点でその歌詞とメロディーとを書き留めた人々がいたからである。

「〇〇村の△△さん」と出身地と名前を添えて、口ずさまれる歌を五線紙に記譜した音楽学者たち。
故郷の方言に魅せられて、古い詩を書き留めた詩人たち。


彼らは、まるで植物採集をするように、歌を探し求めて旅をした “歌の蒐集家たち Song Collectors“ であった。

歌は、詩 lyricsとメロディー tuneが一心同体となったもの、あるいは一対の夫婦のようなものかもしれない。


時がたつにつれて、同じメロディーに新しい詩が替え歌として付けられたり、そのことによってメロディーもまた影響されて変形したり・・・と同じタイトルの歌でもいろんなヴァージョンが生まれて各地に広がっていく。

その様子はまるで家系図を見るかのようだ。

もし詩とメロディーのどちらかが、あるいはそれぞれの一部が失われてしまっていたならば、詩人たちは言葉を補い、音楽家たちはメロディーを蘇らせ、再び二つを寄り添わせた。

パッチワークのように継ぎ接ぎされながら、歌は今日まで紡がれてきた。

やがて20世紀になると、録音技術とインターネットによって歌は一挙に世界中へと広がってゆき、今やその血脈は動画サイトの中に最も生き生きと受け継がれていると言ってもよいかもしれない。

ここに収録したメロディーは、Robert Burns, William Butler Yeats, William Chappell, George Petrie, Frank Kidson, James Johnson, Herbert Hughes, John Glen・・などの、詩人、音楽学者、作曲 & 編曲者、出版 & 編集者そして同時に「歌の蒐集家」であった彼らの厖大なコレクションのごく一部に過ぎないが、それぞれの歌ごとに系譜を辿り、リュートらしい和声と変奏を加えてみた。

これらの美しいメロディーから得られる心の安息は、ひとえに彼らの気の遠くなるような蒐集作業の恩恵である。

そのことを深く心に刻み、このささやかなCDを彼ら “Song Collectors” に捧げたいと思う。

 永田 斉子

CDの詳細情報およびご注文は下記のサイトよりどうぞ!

 

 

 

CD「SongCollectors〜歌の蒐集家たち」

=== リュート演奏:永田斉子 ==

失われつつある歌を探し求めて旅をした「歌の蒐集家たち」。
現在ではイングランド、スコットランド、アイルランドの民謡=フォークソングとして親しまれている歌が、彼らのコレクションの中では少し違った表情を見せていることにきっと驚くだろう。一日の終わりに聴きたい安らぎのサウンド。

価格:1,100円(税込)