高知城歴史博物館「明治元年の日本と土佐」関連企画「音楽会」が日本音楽史を俯瞰するすごいイベントだった

2018年4月28日、高知城歴史博物館が主催する「明治150年特別企画展 明治元年の日本と土佐〜戊辰戦争 それぞれの信義〜」関連企画・「音楽会」にて月琴を演奏しました。

ご来場のお客様、主催の高知城歴史博物館のスタッフの皆様、どうもありがとうございました。

「音楽会」という実にさりげないタイトルがつけられていますが、これが古代から明治時代の西洋音楽の受容までの日本音楽史を俯瞰するものすごいイベントだったのです!

この明治150年の節目に、こういう企画をやってみたいと以前から思っていましたが、なかなか個人の力では難しく諦めていたところに、明清楽の部分で関わらせていただくことができて、とても光栄でした。

プログラムを記録しておきます。

1部 日本音楽史 古代〜近世の展開と楽器

(1)古代 雅楽〜世界で最古の現存音楽
(2)中世 声明〜寺院で発達した宗教音楽
(3)中世 謡〜能の音楽部門として洗練
(4)近世 三曲〜江戸時代の定着した合奏形式

1000年を20分で辿る試み!
CDやヴィデオを流しながら説明するだけかと思いきや、高知歴史博物館の館長さん自ら、様々な楽器を実演しながらのレクチャー。

のっけから笙の幻想的な響きが広がったかと思うと、次は「音を出すの難しいんですけど」と言いながらも篳篥(ひちりき)をくわえると「パプーー、パプー」。もう一挙に雅楽の世界へと引き込まれ、客席からは大きな拍手が沸き起こります。

スライドに声明や謡の楽譜が映し出されると、それを見ながら今度は声で実演、三曲では尺八、お箏を実演。

この館長さん、何者なの?!もうすっかり魅了されてしまいました。

 

2部 幕末の音楽 吟詠と月琴

次に、幕末に流行した吟詠を、秀鳳流日本吟詠会総本部の野中秀鳳氏とその門下の皆様による吟詠と、山本秀峰氏による尺八、橋口霊風氏による詩舞で。袴姿も凛々しく、カラオケを併用した華やかな演奏でした。

漢詩に詳しい学芸員の方が内容を解説してくださったのもとても良かった。

(1)桂林荘 雑詠 諸生に示す その一 (広瀬淡窓)
(2)涼州詞 (王翰)
(3)春夜(蘇軾)
(4)楠公 子に訣るるの図に題す(頼山陽)

 

いよいよ月琴。簡単な歴史の解説を挟みながら、代表曲を演奏しました。スライドで月琴を弾く女性像の絵、楽器や楽譜の写真などを投影していただきました。

月琴奏者・永田斉子(高知城歴史博物館イベント音楽会)

(控え室で撮影)

(1)算命曲 サンミンキヨ
(2)茉莉花 メリイフハア
(3)金盞花 キンセンフハア
(4)九連環 キウレンクワン
(5)四季 スウキイ
(6)漫板流水 マンパンリウスイ

最後に、山内家が所蔵する古写真が投影されました。

山内家所蔵・月琴合奏古写真

山内家使用人による月琴・琵琶演奏会の時の写真。右端の男性・森正幹(森赳の祖父)の生没年から明治27年以前の写真と判断される。(高知城歴史博物館資料集より)

 

3部 西洋音楽の受容 軍隊と教育

高知県立高知丸の内高等学校音楽科の皆さんによる吹奏楽と合唱。

(1)開港と音楽 「ヤンキードゥードゥル」
ペリー来航、国書を提出した時に演奏したとされる曲ですが、実は「アルプス一万尺」!

(2)19世紀の流行歌 「草競馬」「夢路より」「ケンタッキーの我が家」「金髪のジェニー」

(3)鼓笛隊 「官軍行進曲」 「上山藩鼓笛楽」

(4)戊辰戦争と軍歌 「宮さん宮さん」

(5)二つの「君が代」〜フェントン作曲(薩摩藩楽隊が演奏)〜ウェーバー作曲(唱歌として歌われる)
〜伶人作曲(現行)

英国人によって作曲された2種類の「君が代」は、コラール風。
洋楽になじめない日本人には、その和声が苦手だったのか、「やっぱり日本人による作曲でなければ」と現在の伶人作曲のものとなり、これが1981年祝祭日の歌として固定されます。

(6)賛美歌の流入 「イエスわれを愛す」「われ喜びてすすみ」

(7)西南戦争の歌 「抜刀隊」

西南戦争を舞台とした軍歌、のちに陸軍学徒出陣式での行進曲となったこの曲を高校生に演奏してもらうにあたり、教育的配慮から歴史的背景について詳細な説明がありました。大切なことです。

(8)日本人による作曲 滝廉太郎「花」

 

 

これらのジャンルの音楽は、Youtubeなどで聞いていましたが、まさか実演奏を聴くことができるとは!非常に感動しました。高知丸の内高等学校音楽科の皆さんの演奏も大変素晴らしかったです。

 

このイベントの企画内容とその実現力に感服しました。そして日本音楽史の中で省略されがちな明清楽(月琴音楽)を忘れずにいてくださったことに心より感謝いたします。

 

高知城歴史博物館の渡部淳館長、大保さんと一緒に記念撮影。

高知城歴史博物館渡部淳館長、大保さんと月琴・永田斉子