邦楽、洋楽、清楽が交流「文明開化の音がする」

 

『文明開化の音がする』チラシ表

2018年11月18日、群馬県高崎市のアトリエミストラルで開催された「文明開化の音がする」コンサートは、無事に終了いたしました。

ご来場のお客様、広報にご協力下さった皆様、共演の鈴木創さん(箏)、相田南穂子さん(リードオルガン)、主催のアトリエミストラルの櫻井さん、どうもありがとうございました。

三種の音楽が混在していた明治時代

このコンサートは、今年が明治維新150年にあたることから、明治時代の音楽の諸相を探る試みとして企画されました。

「文明開化の音がする」公演より箏、リードオルガン、月琴

左端のリードオルガンが相田さん所有のもの。 右2つは、アトリエミストラル所有。

それまでの邦楽、そこに幕末から加わった中国音楽である清楽、そして明治時代に導入された洋楽という3つのジャンルの音楽がどのように存在していたのか。

それらを当時の人々はどのように習得し楽しんでいたのか。

まずはそれぞれの音楽を一つのコンサートの中で並べて、聴いてみよう!ということで、3部構成で、それぞれ演奏と解説を行いました。

邦楽

第1部の邦楽では、鈴木創さんによる箏の演奏とお話。

鈴木さんご自身の凛とした佇まいと相まって、箏の響きに耳を傾けているとスーッと一点に精神統一されていくような不思議な感覚を味わいました。

洋楽

第2部の相田南穂子さんによるリードオルガンの演奏が始まると柔らかで色彩豊かな和音に満たされます。

小学校時代のオルガンの記憶のせいか、ノスタルジックな気分になってウットリ・・・夢見心地。

現代人でもこうなのですから、オルガンを初めて聴いた幕末の人々は和音というものに戸惑いながらも、魅了されたことでしょう。

清楽

第3部では、月琴の定番曲に加え、長崎弁でつけられた替え歌ヴァージョンの歌もお聴き頂きました。

明治時代に出版された月琴の楽譜には、邦楽曲や唱歌の曲も含まれているものがあること、一方、手風琴などの洋楽器の教本には清楽曲も含まれていることなどを紹介しました。

明治時代の人々は、それまで親しんできた楽器や音楽と擦り合わせることで、新しい洋楽を習得していったことがうかがえます。

 

明治時代の合奏風景

『新式手風琴独習自在』

『新式手風琴独習自在』より

 

月琴+手風琴+リードオルガン+三味線+鼓という組み合わせで合奏を楽しむ人々の絵や、
箏+三味線+月琴+横笛という組み合わせの古写真などが残っていますが、これも出版譜によって同じ曲を共有しているからこそ可能な合奏と言えるでしょう。

Adolfo_Farsari

Adolfo_Farsariの古写真

明治時代の人々が、積極的な、そして寛容な態度で楽器を演奏し、日常生活の中で気軽に音楽を楽しむ姿に、いろいろと思うことがありました。

 

情報交換に収穫あり

何より今回の公演の収穫は、異なる分野の演奏者同士が出会ったことで、情報交換が出来たことです。

月琴や清楽にみられるいくつかの特徴が、中国音楽に由来する清楽独自のものなのか、それとも邦楽の慣習を流用したものなのか、などについて新しい発見がありました。

このような機会を設けて下さったアトリエミストラルさんには、心より感謝申し上げたいと思います。

アトリエミストラルのオーナー櫻井さんのブログ「文明開化の音がした(笑)」もどうぞ合わせてご覧ください。