作者不詳『弾琴図』<リュート絵画>
作者不詳の作品『弾琴図』。
現在は長崎歴史文化博物館の所蔵であるが、この博物館が出来る前、長崎県立美術博物館が所有していた頃に、この作品について問い合わせをしたことがある。
先日、書類の片付けをしていたら、その返答の書類を見つけたので、ここにメモしておこう。
日付は1997年(何と20年前!)。その時点での、研究が進んでいる範囲での返答とのことなので、その点、ご了承いただきたい。
1)作品の現状について
絵葉書(長崎県立美術博物館ミュージアムショップで販売していた)には、作品の現状の全体を掲載している。
・紙本着彩 80.0 ✕38.5 cm
2)制作年代について
日本においては天正・文禄・慶長年間に栄え、教義を伝えるためや礼拝の対象とするための版画・絵画制作が、1583年に来日したジョヴァンニ・ニコラオらの指導で、イエズス会のセミナリオ(中等学校)の画家たちにより行われていました。
1582年より開設されたセミナリオは、豊臣秀吉の禁教により島原半島八良尾、天草下島志岐、島原半島有馬などを転々とし、慶長4年(1599)には長崎に開設されました。その活動は、慶長19年(1614) 、徳川幕府によるキリシタン大追放によってマカオに移るまで続きました。
本作品は、こうした歴史的背景を考慮し、さらに作品の様式比較を行った結果、セミナリオにおける末期の制作と考えられることから、製作年代を慶長年間(1596-1614)と推定いたしております。
3)作品の来歴について
本作品は、故・内田六郎氏(浜松市)旧蔵。
なお内田氏所蔵以前の来歴は不明。セミナリオの画家による西洋の風俗を描いた洋風画は、大名への献上品であったと考えられており、本作品もまた、そのような性格のものであったと推測されます。
4)長崎におけるリュートを描いたその他の作品
長崎には、他に本作品にみられる楽器(=リュート)を描いた作品はありません。
熱海・MOA美術館所蔵<洋人奏楽図屏風>、福岡市美術館<泰西風俗図屏風>他に同種の楽器が描かれております。