【本】幕末維新素描紀行

幕末維新素描紀行

『幕末維新素描紀行』
チャールズ・ワーグマン/著
山本秀峰/編訳
露蘭堂/出版

 

イギリスの挿絵入り新聞イラストレイテッド・ロンドン・ニュースの特派画家、兼通信員として1861年に来日したワーグマンの主要記事と挿絵をまとめたもの、および1872年の江戸から京都への旅行記を翻訳しまとめたもの。

生麦事件をはじめとする社会的事件の詳細から、幕末から明治時代の庶民の生活や文化、風俗に至るまでを記録している。素描も実に細かい。

 

月琴に関する記述がないだろうか、という関心で、読んでみた。
以下、メモとして楽器に関する記述をまとめておく。

1)(船から、長崎へ接岸するための小舟上)海の上では、当時のギター(三味線)を伴奏にして土地の楽師たちが歌っている。(p.16)

2) 別の家にいくと、そこでは日本人の男たち何人かが飲み食いして楽しんでおり、その間、数人の歌姫たちがバンジョーを弾いている。一緒にやろうと招き入れてくれたので、仲間に加わった。(p.18)

3) 一種の盲人組合である「平家当道」と呼ばれる制度が形成されており、彼らに仕事と生計を与えている。(中略)この物語(=平家物語)によると、盲目となった武士はそれから琵琶すなわちリュートを弾くことを習い、そうしてこの盲人楽士協会を起こしたのである。(p.128)

 

1)ギターが三味線を示し、3)リュートが平家琵琶を示していることは間違いない。

ここで日本語訳されていない、2)のバンジョーは 丸い表面板の形から考えて「月琴」を指していると考えてよいだろう。

残念ながら、この本には三味線や琵琶を弾く日本人の素描があるが、月琴は登場しない。

 

著名な写真家・ベアトと組んで、ワーグマン・ベアト商会を設立していたこと、画家・高橋由一の師でもあったことも合わせてメモしておこう。

高橋由一は、日本で最初の洋画家。

高橋由一「鮭」

鮭:高橋由一